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「なんだか、戻ってきても手遅れだったのかなあ……」
彼女がポツリと呟いた。僕は慌ててこう返した。
「お姉ちゃんのこと、僕、怒ってはいるけど、嫌ってはいないよ。いくら裏切られてもさ、家族だもん。みんな、お姉ちゃんのことが好きだったよ」
そう言って笑って見せた。無理に作ったかもしれないが、それでも今は構わなかった。とにかく姉のために笑った。
「ありがとう、ふうちゃん」
彼女も無理に笑ったのかもしれなかった。しかしどんなに恨んでも、怒っても、やっぱり血を分けた2人っきりのきょうだいだ。笑いあうことはたやすくはないが、出来ないわけではないのだ。
「ねえ、ふうちゃん。私、ふうちゃんに全部話していいかな?」
姉が遠くを見ながら言った。全部、とはおそらく彼女が家を出て行ってから、死に至るまでの全てだ。僕の肩に責任が圧しかかる。
「いいよ。話しなよ」
僕がそういうと、そんなにかしこまらないで、と彼女が言った。知らないうちに正座をしていたようだ。苦笑しながら胡座をかき直すと、僕の肩は少しだけ楽になった。
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