ふうちゃんとおねえちゃん

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「それからもうどうしようかと思ってさ。よくさ、ドラマであるじゃん、死んで保険金が下りるっていうの。あれなら上手いこと借金も返せると思ったんだよ。でもまさか、自殺じゃ保険金が降りないなんて、笑っちゃうよね。死に損だったね、私」 彼女はへらへらと笑っている。僕はそれが悲しい表情を感じ取らせないためのものだと悟った。 「そんなこと言うなよ!」 声を荒げた。死に損、なんて言葉を彼女から聞いてしまえばとても穏やかにはいられなかった。彼女はあっけにとられているのか、ぼうっとしているのか、こちらを見つめている。 「死に損なんて言うなよ。お姉ちゃんが死んで、僕らがどれだけ悲しんだと思ってるんだ。生きていれば、あれくらいのお金、時間はかかるけど返して幸せになってたよ。なんでお姉ちゃんはいつも…!」 僕は姉を見つめて黙った。こんな姉の表情をみるのは僕が二〇数年生きてきて初めてだったからだ。姉は僕をまっすぐ捉えながら涙をこらえていた。
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