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「そうだ」
僕はとても大事なことを思い出した。
「お姉ちゃんは、どうして僕の部屋を知ってたの?」
「それは、幽霊だから」
「答えになってないよ」
彼女は本物の笑顔を見せた。
そして、本当は私もよく分からないんだ、と無邪気にまた笑った。
「じゃあさ、なんでここに来たの?」
「来たらまずかった?」
彼女は悲しいときの顔をした。僕はしどろもどろに否定した。
「いや、そういうことじゃなくてさ。僕の部屋に来るなら、実家の方に行けばよかったんじゃない」
これは確かにおかしいのだ。僕の部屋には仏壇はない。それどころか姉の写真の一枚もない。そんな僕の部屋にきたのは疑問だった。仏壇も姉の思い出のアルバムもある実家に帰ればいいのに。
「だって、ふうちゃん。もうすぐお盆でしょ?お盆の時期には私、実家に帰るもの。それに」
そこまで言うと姉は言葉を切った。目線を逸らした。
「姿かたちが私の姿なのは、もしかしたら今だけなのかも知れないし」
幽霊なんて曖昧な存在だもの、と彼女は足した。
たしかに今握っている手は僕から彼女には触れているけれど、彼女からは僕に触れられていないような気がした。
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