教育

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 目が覚めると、見覚えのない天井があった。  ずっと見ていた薄汚く、重々しい石造りの天井ではない。清潔感溢れる真っ白なタイルが敷き詰められた天井。公共施設のような清潔さ。  しかも手足が鎖で繋がれていない。白いシャツに、白い布団。まさかあの地獄のような牢獄から抜け出して、布団に入れるなんて俺自身でさえ思ってもみなかった。  驚いて俺は身体を起こした。手も自由に動く。自分の一部のように自由に動かせる。  もっとも、動かせるのは上半身のみ。下半身にいたっては感覚さえない。  辺りを見回すと、そこはどうやら病室のようだった。しかもベッドは俺の寝ている一台しかなく、どうやら個室の病室、しかも誰もいない。どうやら監禁状態からは解放されたらしい。  しかし、この状況。一体何が起きたんだ? 俺はふんわりとした肌触りの白い布団の中に下半身を入れたまま、思考を始める。  ずっと監禁されていた。そこまでは覚えている。あの薄暗い部屋。動くことすらできないあの窮屈さ、そして暗闇への限りなき恐怖。  あの時に抱いていた全ての感情が、まるで津波のように甦った。  その瞬間、こめかみに凄まじい痛みが走った。 
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