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「誰だ」
咄嗟に俺は問い掛けた。この男からはなにか常人とは掛け離れているような、世俗からはまったく隔絶された世界で生きているような、そんなものを感じた。
思わず睨みつけていたのだが、その男は警戒するどころかむしろ歓迎するかのような笑顔で俺に向かって歩いてきた。
「いや、『囚人』という呼び名は正しくないかな。もう監禁してる訳じゃないし」
男が俺のベッドの前で立ち止まった。男と俺の目が眼鏡のレンズ越しに合う。
「質問に答えろ、誰だ」
この男、笑ってこそいるが目を見れば分かる。こいつは酷く冷めた人間だ。人を二、三人ほど殺していると説明されていたとしてもさほど驚かない。それほどまでの冷たさが感じられるのだ。
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