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「てめえ!」
俺は反射的に立ち上がって男の右頬にパンチを浴びせようとした。しかし何故か下半身が動かず、立ち上がることができない。
「まだ麻酔が抜けきってないんだよ。体を動かしたければもうしばらく安静にするべきだと思うがね」
くそ、足の感覚もあるのに。
男に届かない両腕を必死に振り回して何とか怒りをぶつけたいのに、何もできない。こんなに歯痒いことはない。
しかも考えてみれば、この男の声、どこかで聞いたことがあった。あの暗くじめじめした牢に現れたスーツの男だ。今はTシャツを着てラフな印象を受けるが、あの眼鏡と声質は全く同じだ。
くそ。自分の間抜けさに腹が立った。
「……なんで俺を監禁したんだ?」
暴力的制裁は与えられない。ならば少しでも会話から情報を引き出すべきだ。
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