教育

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「……君はそんなことを言い切れるのか」  男はつぶやく。しかし、その口調からは先程までの柔らかさは感じられず、随分とトゲトゲした口調だった。 「……え?」 「君には私の研究を否定する権利はあるのか」  その男の目からは、一筋の涙が伝っていた。まさかの涙に、俺は少し動揺してしまった。 「私は生まれた時からデータに囲まれて過ごしてきた。父親が遺伝子学者でね、数々の血液病を治療する特効薬を製作してきた。まさに科学者の鑑だったよ。今はもう亡くなったんだがね」  思い出話を淡々と語る男の目からは涙が流れ続け、まるで今は亡き父親を心の底から想っているかのようだった。  だが、俺としてはこんなことどうでもいい。
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