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一度彼は、脱出を試みたことがある。
しかし、その計画は失敗に終わった。何しろ彼が監禁されている場所は地上ではなく、遥か地下だったのだ。
走ろうとも走ろうとも地上が見えない恐怖感を彼は今でも覚えている。
それ以来、彼を監禁している人間は彼の手足や胴体に頑丈な鎖をつけ、ほぼ身動きが出来ないように彼を束縛した。
その事がきっかけで、彼は外に出ることを諦めた。外に未練を持てば持つほど、その希望が打ち砕かれたショックは大きいものだ。
今の彼に出来ることは、ただ考えることだけだ。思考というものだけは、どんな鎖でも縛りつけることは出来ない。
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