監禁

6/8

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
 部屋に射し込んできた一筋の光。その光は、目を閉じていた彼の瞼をすり抜けて、彼の目に光を認識させた。  何事か、ついに幻覚でも見えるようになってしまったのか。そんなことを考えつつも、彼は何が起きているのかを確認すべくゆっくりと瞼を開けた。  目が痛い。光を長らく目にしていないせいだろう、光がまるで目を焼いているかのような感覚。だが、次第に慣れてきた。 「やあ、囚人」  彼が目を開ききる前に声が聞こえた。その声は今まで監禁され、人とすら接していなかった彼にとってはとても新鮮に感じられた。  そこにいたのは、男だった。眼鏡をかけた、スーツの男。それくらいしか分からなかった。今まで見たことのない顔、その男が何なのか、彼もよく分からなかった。  だが、その時彼は感じていた。  この男が来たことで、きっとなにかが変わるのだろう、と。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加