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部屋に射し込んできた一筋の光。その光は、目を閉じていた彼の瞼をすり抜けて、彼の目に光を認識させた。
何事か、ついに幻覚でも見えるようになってしまったのか。そんなことを考えつつも、彼は何が起きているのかを確認すべくゆっくりと瞼を開けた。
目が痛い。光を長らく目にしていないせいだろう、光がまるで目を焼いているかのような感覚。だが、次第に慣れてきた。
「やあ、囚人」
彼が目を開ききる前に声が聞こえた。その声は今まで監禁され、人とすら接していなかった彼にとってはとても新鮮に感じられた。
そこにいたのは、男だった。眼鏡をかけた、スーツの男。それくらいしか分からなかった。今まで見たことのない顔、その男が何なのか、彼もよく分からなかった。
だが、その時彼は感じていた。
この男が来たことで、きっとなにかが変わるのだろう、と。
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