逢魔ヶ刻動物園

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【俺の大事な、】 (※園長は動物に愛情が示された時だけ頭部が人間に戻るというとこだけ読み切り設定。) 「園長って、時々顔が人間に戻りますよね?あれ、何ででしょうね」 「あ?」 園長と一緒に動物園内の見廻り&動物たちへのエサやりをしていて、しばらく会話が無かったのでなんとなく気になってたことを聞いてみた。 ─園長の元の姿。私は結構見たことがある。ほんの一瞬だったけどあれは絶対に今みたいなウサギ頭じゃない。それだけは断言できる。 でも、いつもハッキリとは顔を見ることができないのだ。 「…でも、ほんとに何で戻るんだろ」 「知らん。ワシはどんな時に自分が人間に戻ってるかわからんからな」 「まぁ、ほんとに一瞬ですからね…」 「でもどうじゃ!人間の時のワシもカッコいいだろう!」 いや、今言ったじゃん。一瞬だって。 カッコいいかカッコわるいかの判断なんて一瞬じゃできないって。 なんて言えるわけもなく、私は適当に「あー…カッコいいんじゃないんですか」と返した。 「そうだろそうだろ!」 なのに園長は上機嫌。 ほんとに単純で助かる。 行くぞ華!!と鼻歌を歌いながら再び園長は歩き始めた。 私はそれを小走りで追いかける。 「~♪♪~♪」 「…ねぇ園長」 「なんじゃ」 「園長にとって、ここの動物…ううん。みんなはどういう存在なんですか?」 私がそう聞くと園長は急に真面目な顔になり、話し始めた。 「…最初はあいつらのこと、『自分が人間に戻るためのもの』としか考えて無かったんじゃ」 私は園長の横顔を見ながら黙って頷いた。 「でもな、一緒に月日を過ごすたびにしだいにその考えは薄れていった」 「………」 「あいつらといるのがすごく楽しくなっていったんじゃ。今は一緒にいるのが当たり前だと思ってる」 「……あ」 「ここの獣たちは俺の大事な、家族だ。一匹たりとも欠けることは許さねぇ。」
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