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とある街で一人の女性が深夜に何者かに刺し殺されるという痛ましい事件が発生した。
警察が懸命に捜索したが目撃者を見つけ出すことすら出来なかった。
事件が起きた街は、昼間は賑わっているが夜は人通りが少なくなる。犯人はその時間帯を狙ったのだろう。そうしたことを踏まえると地元の人間の犯行が濃厚となってくると警察は考えた。
所轄の刑事は、聞き込みのため現場から数百メートル離れた喫茶店の店員から話を聞いた。
「この女性はご存知ですかな」
刑事は、被害者の女性が写った写真を差し出す。
「いや、見たこと無いですね。どうかされたんですか?」
「この近所で殺されたんですよ」
「えっ、殺人事件が起きたんですか?」
「ご存じなかったですか」
店員は、小さく頷いた。
「こんな近所で殺人事件が起きるなんて、物騒ですね。刑事さん、早く犯人を捕まえてください。こんなに美人な女性を刺し殺すなんて許せないです!」
店員は、続けて言った。
「そういえば、最近不審な人物をよく見かけるんですよ」
「それは、どういった人物ですかな」
「いつもサングラスをかけていて何も注文しないままずっと外を眺めているんです。怪しいですよね」
「確かに怪しいですな」
「それに、右手に包帯を巻いていて、気にしていました」
「その怪しい人の年齢はいくつぐらいだと思います?」
「えーっと、顔はサングラスでよく見えなかったので推測ですが40代くらいのおじさんだと思います」
刑事は、少し笑って店員を睨みつけた。
「何がおかしいんですか?」
「いや、私は、あなたの言う怪しい人物よりも、あなたが怪しいような気がしましてね」
その日、喫茶店の店員は、警察に逮捕された。殺人事件の容疑で。
刑事は、店員の証言の中の嘘を見破り、その店員を逮捕した。読者の皆さんには、その嘘が何なのかを考えて欲しい。
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