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「ただいま。」
母の声がした。
いつの間にかソファーで眠ってしまった晴斗は急いで身を起こす。
「お帰りなさい。」
母は早速夕飯の準備に取りかかった。
「やべえ、宿題やんなきゃ。」
時計は6:00を切っていた。
いつもはこのタイミングで宿題をやったのか尋ねてくる母だが、この時はそれさえしなかった。
晴斗は自分の部屋に入りノートを開いた。
数学の宿題をこなすことなど学年でトップクラスの実力を誇る晴斗にとって何の造作もなかった。
晴斗はさっとノートを閉じるとそれを鞄の中にいれた。
こうした日常的なことも、全てが最後と隣り合わせになっている。
…今日から日記を書こう。
晴斗は何も書かれていないノートを開いた。
その時だった。
コンコンというノックと同時に「入るぞー」という低い声が聞こえた。
「お、お帰り、父さん。今日はやけに早かったんだね。」
父は何も言わずに晴斗のベッドに腰掛けた。
「晴斗…気分はどうだ?」
「別に全然普通だよ。父さんこそどうしたのさ?」
自分の心境は普通では無いし、父の心境も恐らくそうだろうと思う。
でも、自分が辛そうな姿をしたら父はもっと辛くなるかもしれない。
しかし、そうやって強がっていることなど父にはお見通しだった。
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