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橋から見える川は昨日のものとは違い、とても穏やかに流れていた。
…ここに来てから一時間以上経つがあの少女は一向に姿を現さない。もっとも約束をしていたわけでもないし、来なくても当然だろう。
だが、晴斗はそれでも待っていた。
あの寂しげな笑顔と共に少女が言った「さようなら。」という言葉が何回も頭の中でこだまして、そのたびに胸が締め付けられる。
頬に冷たい何かが触れた気がした。
空を見上げるとあれだけ晴れていた空が曇っていて、ポツポツと雨が降り始めていた。
それでも晴斗は待ち続ける。
ポツポツと降っていた雨は次第に土砂降りになり、目も開けていられないほどになった。
冷たい夏の雨は徐々に晴斗の体力を奪っていく。
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