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いつの間にだろうか。
雨が降っていた。
夏の雨は蒸し暑くて正直心地が悪い。
…だが、こんな夏の雨に
打たれることができるのも
もう、
最後なのかもしれない……
晴斗(ハルト)は右手に持った青い傘を閉じて前を向いた。
ポツポツと額に当たる雨粒が今はむしろ心地良かった。
今は見るもの全てがわずらわしく思えてくる。
喫茶店の前に来た所で晴斗は足を止めた。
窓ガラスが反射して見える自分に目が合った。
「……オレ…脳にバカみたいにデカい腫瘍があるんだってさ…。嘘みてぇなハナシだけど、あと一年で…死ぬんだってよ……。」
窓に映る夏川晴斗は悲しげにそう呟いた。
今の自分は何て悲しい瞳をしてるのだろうか。
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