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「喫茶店に入るのはやめとこう…」
もとから入る気はなかったが、雨に濡れた心がひとりでに呟いた。
とにかく自分の悲しい瞳を、今は誰にも見られたくなかった。
晴斗は行くあてもなく歩き出した。
どこへでもなく歩いている内に少しずつ気分が軽くなった気がする。
名の知れた医師である父は自分に余命を宣告するとき、
運命を変えることはできないと言った。
ついさっき、
泣きながら…そう言った。
「辛いのは…オレだけじゃないんだよな……」
とにかく悲しい顔を持ち帰りたくないと思った。
晴斗は再び歩き出した。
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