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辿り着いた場所は佐々木の自宅だった。
ある映画のインタビューで妊娠役をしてみたいと口走ってはいたが、まさか役よりも先に本人がそうなってしまうとは。
大泉は未だに混乱しており頭痛のする頭を撫でながらチャイムを鳴らした。
「はいーどなたですかー?」
落ち着いた声音。
不思議に思った大泉は首を傾げた。
「堺さんですよね?わたくし大泉ですけどもー。蔵さん大丈夫ですかー?」
ガチャ、と開いた扉から満面笑顔の堺が現われた。
嫌な予感。
手首を掴まれ、無理矢理奥まで引っ張られると
「………なんじゃあ…これは…」
ソファの上で乱れた服を整えながら潤んだ瞳を向けてくる佐々木が目に入った。
ネクタイ、ベルトがそれぞれ別の床に散らばっていて振り返れば奴がいた。
「んふふー」
嫌な含み笑いにゾクッとし、大泉はとりあえず肩を震わせる佐々木の側に寄った。
「…蔵さん、なしたの?こんな…」
「大泉…俺な…」
「はい…?」
「俺…、」
妊娠した。
それだけは言わないでくれと密かに心の中で願った。
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