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「うわークラさん今度は犬役っスかー!」
机の上に置かれた台本。
ペットボトルに口を付けつつ佐々木の方を見る。
「犬なんよな~…俺犬としゃべれへんからなぁ…」
ポケーッとソファに凭れ掛かっている佐々木の呟いた言葉に口内に含んだ水を吹きそうになる。
手で素早く抑えたおかげでなんとか耐えて喉に流した。
「…いやいや、犬とは誰もしゃべれへんでしょ普通…」
「え~…でも、あれやで?」
前のめりに身を乗り出してくる佐々木。
塚地も同じような格好で首を傾げる。
「動物番組でな、犬とテレパシーみたいなんで会話してる外国人おったよ?」
「……それは別でしょうに」
「別、別てなに、なんやねん」
「だからぁその外国人は特別なんじゃないんですか?」
「特別な人は、みんな動物と会話できんの?」
台本を手に取りまたソファに身を任す。
ペラペラページを捲るその様子を眺め、深い溜め息をついた。
「っていうかなんか、話しがおかしなってってません?」
「そうしたんは塚っちゃんやん~」
「(ほんっま天然やなこの人)」
ペットボトルを置いて口元を手の甲で拭う。
「まぁ、あの有名な会社のアニメ声優ですもんね。しかも主演。」
「うん、犬の気持ちが分からんからさ~…俺首輪とか付けようかなって思とんねんけど…」
「やめてください」
「え?」
塚地に向けられた顔は髪と同じくぽや~んとしている。
勢いよく首を振り目を細めた。
「なんで首輪やねん」
「…犬は首輪してるやん」
「人間がしたって犬の気持ちなんかわかりませんよ」
「あ、犬の気持ちっていう雑誌あったなぁそういえば…」
「…………」
(この人本物やなぁ…)
おわり。
ド天然白さんでした。
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