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救急車に運ばれた僕は、翌日の朝病院で目が覚めた。
窓から差す光が眩しくて鬱陶しい。
起き上がってカーテンに手を伸ばそうとしたら肩にキリッと痛みが走った。
「…そうか…僕…」
肩に触れた時、ハッとした。
「…一番君…?」
辺りを見渡すも彼の姿は無い。
他の病室か?
側に来たナースに聞いてみると、ここには運ばれていないという。
「…どういうことだ。」
彼は、僕よりも酷い傷を負っていたというのに。
「……バカ一」
小さく呟いた。
躊躇なんてする気もなかった。
だから僕は痛む体を無理矢理ベッドから下ろした。
「ちょ、高野さん!何してるんですか!?まだ治ってないんですよ!?」
「うるさい!どうして一番君が居ないんだ!彼は今どこに…!」
「うるせぇなぁ」
「え…?」
声がする方に顔を向ける。
そこには白衣を着てピンピンしている一番君が立っていた。
「…一番くん…」
「無理すんじゃねぇよ。俺の為によぉ」
歩み寄ってくる彼。
ふ、と体の力が抜けて僕は床に尻を付いた。
「一番君…もう治ったの?」
いや、有り得ない。
「…高野」
「…え、なにバカ一」
「てめぇ、なんだと」
盛大な溜め息を吐いた一番君は屈んで僕の頬に手を這わせてきた。
「バカ、バーカ、バカいち」
「うるせぇ財布」
「さいっ!?ぼぼ僕のことそんな風に思ってたの!?」
「…」
一瞬、何かが唇に触れた。
ほんの一瞬だったから今の状況を把握するのに時間が掛かった。
「…いち…ばん…く…」
「…わりぃ」
「え…」
「俺からのキス待ってたくせによぉ何だその顔」
「っはぁ!?まっ待ってる訳な…!」
一番君の顔に手を伸ばしたら、その手は一番君を突き抜けた。
ああ…、そうか。
目の前に居た彼はもういない。
「…一番君…バカ一…」
(ほんとはずっと待ってたよ)
終わり。
一高。高野さん好きだ←
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