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「これ、郷田の車?」
郷田に今すぐ来てくれと携帯越しに頼まれて呼ばれた場所まで来たは良いが…。
何故駐車場なんだ。
ムードもへったくれもない。
「…まぁ乗れよ」
運転席に郷田、助手席に秋本が乗る。
不機嫌そうにロックをした秋本を横目にふっと笑う。
「あ、何笑ってんだよ」
こちらに顔を向けた。
唇が尖っている。
怒った時の彼の癖だ。
「お前さ、なんでよりにもよって駐車場~?とか思ってんだろ?」
「…だったら、何だよ」
窓に視線を逸らされ困ったように口元を緩める郷田。
「女みたいだなお前」
ん?、と軽く首を傾げて助手席の背もたれに腕を掛ける郷田は身を縮める秋本に詰め寄った。
「な、ななな、何言ってんだよ!ババ、バカだろお前…」
吐息が鼻にかかるくらいの近さまで顔が寄り動揺を隠せない秋本は目をキョロキョロさせている。
「…お前にだけ、バカなのかな」
「………え?」
見上げれば一点に集中してまた近寄ってくるのは唇。
不思議と拒みはなかった。
そのままじっと、ゆっくり瞼を閉じていく。
ふ、と柔らかい感触。
触れるだけのそれはすぐに離れた。
「……」
瞼を上げる。
目の前にはくまさんのぬいぐるみがあった。
「どうだった?くまさんのキスは」
ぬいぐるみを手でくいくい動かしながら悪戯に口角を上げた。
「…郷田…」
声のトーンが下がっている。俯く秋本を見て郷田はこりゃまずいかなといったように一旦離れようとした。
いつの間にか掴まれていた手首が引かれ、抱き着かれる。
「…もう…いっかい」
「何?」
「今度は…口で…」
「くまさんの?」
「郷田のだよ!」
小さなミラーに映るのは唇を重ねた二人だった。
終わり。
ハズいぞっ!!
なんだこれはっ!!←
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