236人が本棚に入れています
本棚に追加
「死ぬ前に白いご飯を食べさせてやりたかった！」と天に向かって叫び、自分も死のうと八歳の韓信は生のネズミを口一杯に頬張る。
だが韓信は死ななかった。妹を川に流し「今度生まれて来る時は、白いご飯が腹一杯に食べれる家に生まれるんだぞ」と泣きながら川を流れて行く妹に祈りを捧げた。
それから韓信は小さな街の下水のマンホールを見つけ、そこの中で生活するようになった。食料はネズミがうじゃうじゃいるので困ることは無かったが、真冬になるとネズミが姿を消した。
韓信はマンホールから出て凍り付いた道を穴だらけの靴で歩く、寒さと飢えで意識が遠のき「妹に会える」と言って道にばったりと倒れた。
身体中を誰かが洗っている。それに暖かい湯に浸かっているようだ。「ここどこ……」。白い服を着た女性が見えてきた。
「目を醒ましました！」
女達が騒ぐ。
年老いた男が韓信の口、目、身体をくまなく検査する。
女性が小さな茶碗に白いお粥を運んできた。
「これなんですか？」
韓信は初めてお粥をみたようだ。
女性は不思議な顔をして、「米の柔らかいのですよ。どうぞお食べ……」と優しく応えてくれた。
韓信は妹を思いだした。涙がポロポロ流れ出した。韓信は悲しくて悔しくてお粥を食べる事が出来ない。
女性がお粥をスプーンで口の中に入れてくれた。
一口を、ゆっくりと口を動かした。
お粥のなんとも言えない甘さが口の中に広がる。
韓信は女性からスプーンと茶碗を奪い取りガツガツと食べ出した。
部屋の隅でピシッとしたスーツ姿の男と医師が話をしている
「奇跡の子です。生命力がけた外れです」
「そうか、しばらく面倒を見てくれ」
「はい、分かりました」
男は部屋を出た。
韓信は病院で生活するようになり、近くの小学校にも通った。成績は先生が舌を巻くほどずば抜け、身体能力も学校で１番であった。
韓信は地元中学に行かず北京の有名進学校に行くことになった。
旅立つ前、妹を流した川に茶碗一杯のご飯を川に流して「お前の分まで生きる」と妹の魂に誓った。
韓信は驚異的な成績で、士官学校に入学した。
そんなある日、豪華な料理屋に豪勢な料理が並べられた円卓に一人の紳士が座っていた。
「私の名は劉応と言う」
頭のいい韓信はこの人物が何を考えているのか、どういう人物か分かった。
最初のコメントを投稿しよう！