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お銀がポツンと小さな声でいう。
「石井、どうにかしてくれ」
坂井首相がお銀を睨む。
「世界最高の軍師に黙れと仰るのですか?」
「元やくざだろ」
中西防衛大臣が言う。
お銀が立ち上がった。
「俺は博徒だ。何が悪い」
お銀が懐に手を入れようとした。隣の龍がお銀を無理矢理、席に座らせる。
「任せてくれなければ我々は辞任します。あなた達では間違いなく日本は占領されます。閣僚会議で任せると首相は仰ったじゃないですか!」
首相が「そうだが、防衛会議がある。その意志も大事だ。他の者はどう思う」
坂井首相は鳩の様に首と意志を方々に向けている。
松田官房長官が「私はこの会議が最終決定会議としたい」ときっぱりと言う。
「他の者は……」
全員が頷いた。
石井が立ち上がった。
「好きにして下さい。私は帰ります」
石井が立ち上がって、部屋を出た。二人が後につく。
「石井さん、部屋に戻って下さい。あいつらじゃあ日本は潰れる」
後から龍が言う。
「お銀さん……」
「革命は止めたのか、やるのか」
「大統領になりますよ」
「じゃあもどんな。警察、自衛隊、国民を掌握して一気に転覆するのさ。今は手札を見せるな、もどろう。俺もバカどもを我慢する」
「分かりました」
石井が、会議室に戻って椅子に座った。
全員が石井をシラーとみる。
「済みませんでした。ちょっと手洗いに行ってました。話の続きですが、先制攻撃は私にお任せを……。私以上に実戦経験を積んだ者が自衛隊にいますか?長浜幕僚長……」
「いえ、それは……」
「じゃあ決まりですね。現場の指揮は私がとります。石井部隊は福岡に行きます。私以上の者がいるなら言って下さい」
「石井大臣、外務大臣の仕事はどうするのですか?」
「曹艦隊を排除することが外務省の一番の仕事でしょう」
「条件がある。この会議の命令に従うと言うことなら、福岡に行ってよろしい」
首相が石井を睨んで言う。
「この会議の目的は一つでしょう。曹国大艦隊殲滅でしょう。分かりました命令には従いましょう」
「反対意見は!」
「……」
誰も何も言わない。
「よし、決まりですね。石井部隊は福岡に飛びます。必ずや、日本海に敵を沈めてみます」
3人は会議室を出た。
「お銀さん、これでいいですか」
お銀が微笑んだ。
「お銀、お前、石井さんを見る目がおかしいぞ、……まさか……」
龍がお銀をまじまじと見る。
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