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桜も、殆どが散ってしまい、木は寂しそうに佇んで花びらの絨毯になった地面を見下ろしているようだ。
そんな校舎裏の桜の木の下には、男と女がいる。
男は三年生になったばかりの、かなり女子から人気のあるサッカー部キャプテン。
プレー中の彼の笑顔には、失神者が出るほどの…所謂、イケメンだ。
そんな彼が、女に告白をしていた。
彼女は、腰まである長く綺麗な髪を春風になびかせ、整った顔で申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさい。男性とは付き合えませんから」
透き通った声からは想像もつかない衝撃発言だ。
「えっ、じゃあ…あの噂は本当だったの…?」
動揺を隠しきれず、聞いてしまう。
「…そうですね」
彼女は申し訳なさそうな顔。
「…いやっ、それなら仕方ない…かな」
腑に落ちないが、取り敢えず笑って取り繕う。
「サッカー、頑張ってくださいね。応援してますから」
彼女の笑顔は最強だ。
誰をも魅了し、虜にしてしまう。
――彼もそうだった。
振られたにも関わらず、彼女のことはすぐには諦め切れないだろう。
うん、と返事をし、真っ赤な顔でフラフラと校舎に向かって歩き出す。
女はその背中を見送り、寂しくなった桜の木の根本に腰を降ろし、空を見上げた。
「…本当に、ごめんなさい……ありがとう」
眼をつむると、疲れていたせいかそのまま眠ってしまった。
また、春風は花びらを舞い上がらせる。
………一部始終を目撃してしまった男が一人、初めて恋に堕ちた。
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