一.

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「メグは今日も呼び出し~?」 ふわふわの肩までの髪を弾ませながら、白石未来(シライシミライ)は恵に近づく。 恵は溜め息をつきながら、席を立った。 「いったい、誰のせいかしら?」 無表情に答える恵に、シュンとした顔で謝る。 「ごめんなさい、私です」 仔犬のように可愛い未来を、少し虐めるのが楽しい。 彼女に犬の耳と尻尾があれば、間違いなく今は垂れているであろう。 恵は、素直で可愛い未来が大好きだ。 「嘘よ、未来は悪くないわ。私が頼んだことだったんだし、いつまでも未来を縛るわけにはいかないっしょ?」 ニコリと笑うと、未来はパッと顔を上げ、尻尾を振っているかの如く、眩しいくらいの笑顔になる。 「メグは優しいねっ♪」 (この顔には癒されるな~) 尻尾を振っているであろう、未来の頭をよしよしと撫でる。 いつものことだが、クラスメートはその光景を微笑ましく見守る。 別名、『女神と天使の戯れ』だそうだ。 そんなことを皆に言われ、注目を浴びているとも知らず、二人は仲が良くいつものようにじゃれ合う。 「…まぁ、呼び出されたから取り敢えず行ってくる。未来は先に帰ってて」 「うんっ!明日は一緒に帰ろうねっ」 バイバイと手を振り、スキップしながら廊下に向かった。 (…ホンット、可愛い) 可愛い未来を見送りながら鞄を持ち、恵も呼び出された場所に向かおうとした。
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