一章 たった一言、たった一節

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あの騒動の後の放課後、彼は駅にいた。 目的は勿論、歌うため。 通る人は見向きもしない。 彼はギターを持ち、弾き始める。 さーて、歌うか! 彼の口から音が紡がれる。 ああ、あの不良にも届いてほしかった。 「It turned one's eyes away────」 「俺のビートはきこえる?────」 しかし、依然誰一人として振り向かない。 今日も、ダメか。 彼に漂う諦めの匂い。 「憧れが力さ────」 「まっすぐ伝えたい気持ちがある────」 それでも、彼は歌った。 彼には諦めたくない、憧れがあった。 いつかなりたい目標が。 そこに、観客ともいえぬ声が演奏を遮った。 「お前は」 思わず演奏を止める。 鼻に絆創膏をつけたどこか漫画のような雰囲気のこいつは、今日喧嘩をしていた不良の片割れ。 「俺の歌を聴きにきたのか?」 99/100の絶望を、あるいは1%の希望を持って彼は不良に聴く。 「……好きにしろよ」 「……そうかい」 再び、彼は紡ぎ出す。 「It turned one's eyes away────」 「俺のビートはきこえる?────」 「憧れが力さ────」 「まっすぐ伝えたい気持ちがある────」 「possible to recall it────」 「駆け抜けれるこの足がある────」 「辛いリアルも燃料に変えて────」 「忘れたのか────」 「燃えていたお前を────」 「風がせかす────」 「もっと燃えろと────」 「I want to believe You────」 「まだ終わらないだろ────」 「風がなでる────」 「俺の冷めた体を────」 「変わりたい──進みたい──」 「扉を超えたその先の夢へ──────」 .
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