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一度目のサビが終わった頃、不良の目からは涙が溢れていた。
それを見て、彼は再び演奏を止める。
彼は歌う時の彼じゃなく、彼の本当の、心からの言葉を発する。
語るように、呟くように。
優しく、深く。
「たった一言、たった一節伝えるのって、めちゃくちゃ難しい。アニメみたいにうまくいかないし、こんな場所で歌ってたって誰一人振り向かない。けど……伝えたくて仕方ない、感じてほしい…………」
だから、あえて聞きたい。
だから、彼は本当の自分を詠う。
だから、ここだけは憧れじゃない。
「僕の歌、届いたかな?」
不良の心に感情が噴火する。
悔しいほどに、涙が止まらない。
きっと、忘れかけていた。
夢ってものを。
くだらないことにうつつを抜かして。
変にひねくれて。
だから、一言。
たった一言だけ伝えた。
「お前の歌……届いたよ」
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