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彼は幼い頃、とあるアニメを見た。
そのアニメは、歌で敵を倒す……いや、ハートを奮わせるアニメだった。
見てるこっちの心にも、伝わるくらい。
「すごい……。僕も、こんな男の子になりたい!」
まっすぐな、憧れ。
このくらいの年代の子供なら当たり前だ。アニメの主人公に憧れるなんて。
かくして、彼は『歌』と出会った。
中学に彼が入った時の事だ。
彼はあまり口数が多い方ではなく、クラスからも暗い印象を受けていたに違いない。
彼は勿論軽音楽部に入った。
アニメの主人公がバンドを組んでいたからだ。
他の人から見たらどれほど滑稽に見えたろうか。
根暗人間がバンドを始めた。
どんなキャッチコピーかと疑う。
しかし、重要なのはそこではない。
そこで、とある少女と出会うことになる。
雪のような肌が印象的な彼女の名前は羽川あかり。
彼女が奏でる楽器はキーボード。
部のアイドル的存在だった。
そして、彼にとってはそれこそ運命を変えるものだったのだ。
その出会いは。
そんな彼女と彼の間にとある事件が起こったのは、入学して数ヶ月たった夏のこと──。
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