一章 たった一言、たった一節

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中学一年の夏からこれまた数ヶ月。 冬の事だった。 雪の中、彼はあかりに向かって歌を歌っていた。 二人は防寒着を着用。 よくもまあ寒さの中ここまで弾けるものだと、他の人がいたなら思うだろう。 しかし、生憎人気はない。 「It turned one's eyes away. 俺のビートはきこえる? 憧れが力さ まっすぐ伝えたい気持ちがある possible to recall it─ 駆け抜けれるこの足がある 辛いリアルも燃料に変えて 忘れたのか 燃えていたお前を 風がせかす もっと燃えろと I want to believe You まだ終わらないだろ 風がなでる 俺の冷めた体を 変わりたい 進みたい 扉を超えたその先の夢へ」 彼女に向かって歌う。 この行為は当時の彼に、ある種の快感を与えていた。 歌っている間は、君と、僕だけ。 恋の感情とは少し違った。 友情とも少し違った。 いつしか彼女が大切な存在になっていた。 「前よりはうまくなったかな?」 あかりに確認をとる。 だが彼は確信していた。 足跡なぞ見えなくとも、前進していると。 「そんな毎日聴かされてたらわかんないわよ」 ふふふと笑う。 その言葉の裏にある意味を二人で共有しながら。 なんてことはない。 ただ二人がいて、一人が歌って、一人が聞く。 小さな、小さなライブ。 彼女は続ける。 「それより、続きはまだなの?」 「うーん、いいフレーズが浮かばなくて」 きっと永遠に、この時が続くんだと、愚かにも彼は思っていた。 .
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