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中学一年の夏からこれまた数ヶ月。
冬の事だった。
雪の中、彼はあかりに向かって歌を歌っていた。
二人は防寒着を着用。
よくもまあ寒さの中ここまで弾けるものだと、他の人がいたなら思うだろう。
しかし、生憎人気はない。
「It turned one's eyes away.
俺のビートはきこえる?
憧れが力さ
まっすぐ伝えたい気持ちがある
possible to recall it─
駆け抜けれるこの足がある
辛いリアルも燃料に変えて
忘れたのか 燃えていたお前を
風がせかす もっと燃えろと
I want to believe You
まだ終わらないだろ
風がなでる
俺の冷めた体を
変わりたい 進みたい
扉を超えたその先の夢へ」
彼女に向かって歌う。
この行為は当時の彼に、ある種の快感を与えていた。
歌っている間は、君と、僕だけ。
恋の感情とは少し違った。
友情とも少し違った。
いつしか彼女が大切な存在になっていた。
「前よりはうまくなったかな?」
あかりに確認をとる。
だが彼は確信していた。
足跡なぞ見えなくとも、前進していると。
「そんな毎日聴かされてたらわかんないわよ」
ふふふと笑う。
その言葉の裏にある意味を二人で共有しながら。
なんてことはない。
ただ二人がいて、一人が歌って、一人が聞く。
小さな、小さなライブ。
彼女は続ける。
「それより、続きはまだなの?」
「うーん、いいフレーズが浮かばなくて」
きっと永遠に、この時が続くんだと、愚かにも彼は思っていた。
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