得体の知れない幸せ

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その日、遅くまで残業していたY氏は、アパートに帰宅してすぐに疲れはてた体をベッドに埋(うず)めた。 32歳。妻も恋人も無し。仕事も可もなく不可もなくといった感じで毎日同じ繰り返しの日々を送っていた。 午前3時頃。疲れすぎてなかなか寝付けなかったY氏がやっとウトウトし始めた時、玄関のドアをノックする音が聞こえた。 「全く…。誰だよ、こんな時間に……」 Y氏は無視して睡眠に集中しようとしたが、ドアをノックする音は何度も続くため、Y氏は重い腰を上げて玄関へ向かった。 「ったく…。はい? どちら様ですか?」 イライラした口調でこう言い放ち、Y氏は玄関のドアを開けた。しかし、玄関先には誰もいなかった。 いや、厳密に言えば2人いたのだ。Y氏がふいに目線を足元へ下ろすと、そこにはブランケットにくるまれてスヤスヤ眠る2人の赤ん坊がいたのだ。
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