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誰にも言わずに楽屋を出た。
アイツは満面の笑みだった。
久々に歩きたくなって、マネージャーを無視して徒歩で帰ることにした。
ふと、思った。
アイツは、俺より、羽瑠衣くんが好きなんじゃないかって。
羽瑠衣くんも羽瑠衣くんで、アイツが好きみたいだから。
両想い、みたい
それなら、何故アイツは俺と付き合っている?
別れたい、そう言えば良いのに。
ああ、そうか。
「言えないんだ、
優しい人だから…」
もう日が暮れていて、吐く息が白かった。
綺麗な月が、ぼやけて見えた。
静かに、頬を伝った涙。
『別れる』
脳裏では、そう考えた。
『別れよう』
好きなのに、別れる。
でも、その好きは、俺の一方的な愛で、アイツの愛は、違う人に向けられている。
好きな人の幸せを、願ってやるのが、俺の役目?
そうなのかな
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