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それから二日はとても楽しかった。
何気ない話も、つまらないテレビ番組も、風のささやきも、憂鬱な雨も、なにもかも……
楽しい日々は、矢のように過ぎ去り、別れの時がやってきた。
「じゃ、正月にはまた帰ってくるよ。」
「体には気をつけるのよ。」
「…………」
もっと一緒に居たい。
わがままって言われるのはわかってる。でも……
「そんな顔すんなよ。」
お兄ちゃんは私の心を見透かしたように頭に手を置く。
「ちゃんと帰ってくるからさ。」
小指を立てた逆の手を私の前に持ってきながらの言葉。
私はその小指をしっかりと手で握った。
「約束だよ。」
「ああ、約束する。」
短いやり取りの後、お兄ちゃんは歩き出した。
私は、今出来る精一杯の笑顔をつくり、お兄ちゃんが見えなくなるまで手を振った。
それからの日々、おもしろくなかった番組達が、少しだけ、くすぐったく感じた。
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