月夜のウサギ

4/5
前へ
/5ページ
次へ
ウサギ男は家のほうを眺め、そして自分の周囲を見回した。 見つから……ないよね? 男は右ポケットに手を突っ込み、鈍く光る三又の……ってフォーク!? なんで!? しかも自然な流れで口に放るし! 誰なのあれ!? ウサギ男……恐るべし。 そして今度は左ポケットから黒蜜を取り出して…… ……もうツッコミ疲れたよ。 「んぐ!?そこに居るのはサキじゃねぇか!」 ばれた!? 私……変態の知り合いなんて居ない! でもなんでだろう。懐かしい声。 「ど……どちらさまでしょうか……。」 うん。 きっと気のせいだ。 ブザーの準備……。 「なんだよ。お兄ちゃんのことを忘れたのか?」 ウサギ男はサングラスを外した。 「お兄……ちゃん?」 上京してからというもの一度も帰って来なかったお兄ちゃん。 今、会えたのがうれしくって、悲しくて。 「サ、サキ!?そんな顔してどうしたんだ!?」 ああ、やっぱりお兄ちゃんだ。変態さんになってしまったけどやっぱりお兄ちゃんだ。 「……。」 私はゆっくりとお兄ちゃんに抱き着いた。 わたしの突飛な行動にもお兄ちゃんは何も言わず、昔のように私を包んでくれた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加