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私よりほんの少しだけ背の高い桃々と並んで歩くと、道行く人達の視線をとても感じる。
勿論、それは私じゃなくて隣でニコニコ笑う親友への視線な訳だけど………
「音彩?私の顔に何かついてる?」
「…ううん。今日も眩しい笑顔だなぁと思っただけ。」
私が言うと、「もう音彩ってば」と小さな苦笑を桃々は浮かべた。
この親友は、どこぞのゲームや小説のヒロインみたいにド天然の超鈍感、なんてことはない。
小さい頃から変質者に攫われかけたり、ストーカーされたりとかしてれば自分が中々の顔持ってるって自覚くらいするよ。
出会ったばかりの頃に私が言った、かなり不躾な言葉に桃々はそう言った。
そしてその言葉になるほどと納得して、それ以後私の方から何かと話かけるようになったのはそう昔のことじゃない。
そして私と桃々は、翌年同じクラスになったのをきっかけに一緒に行動するようになって、割と早くにお互いを親友と呼ぶようになった。
「でも、本当に良い笑顔してるよ、桃々。」
「~~~~~~っ。もう!!ホントに音彩大好きだよっ!!」
そう言って、道のド真ん中で抱きついてきた桃々を軽くかわして私はサッサッと学校へと歩く。
その私の後ろを桃々がムッとした表情でついてきた。
周囲の人達の視線はそんな桃々に釘付けで、私は軽くため息をついた。
「そういえば、前に花屋があった辺りにケーキ屋できたんだって。」
「ホント!?音彩、帰りに行こ!」
こんな風に、親友との騒がしくも楽しい日常がずっと続くんだ。
この時の私はそれを一片の疑いもなく信じていた。
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