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「音彩、帰ろっ」
1日の授業が終わりSHRもそこそこに担任が教室から出て行くと、2つ向こうのクラスの桃々が入り口からひょこりと顔を覗かせた。
「今準備するからちょっと待って。」
「了解!」
入り口付近でふざけて敬礼する桃々に呆れたような視線を送り、私は鞄に教科書やノート、筆記具その他諸々をつめた。
そして中々に重い鞄を背負い(この学校の鞄は指定じゃなく、派手すぎない学生らしいものならいいことになってる。因みに桃々は大きめのトートバックだ)、顔を上げると桃々はニコニコとこちらを見てる。
そして、そんな桃々に顔を赤らめる男子や、同じくニコニコ笑う女や、桃々を睨む女子。
さらに一部の生徒からは『早く準備しろや』的な視線が私に送られる。
「お待たせ、桃々。帰ろっか。」
「うん。モチロン、ケーキ屋さんにも行こうね。」
いつもの3割増に輝かしい笑顔に廊下にいた生徒は勿論、教師までもが顔を赤らめた。
我が親友ながら、恐ろしい子だ。
アレとー、コレとー、ソレとー、と何のケーキを食べようかと口に出して考えてる親友にハイハイと返しながら靴を履き替えて土間から外に出る。
外に出ると、ヒューとひんやりした風が抜けていった。
「もう秋だね。」
「桃々の好きなスポーツと食欲の秋ね。」
「なっ!それを言うなら音彩は読書の秋じゃない!」
「ハイハイ、そーですね。」
「もう!音彩っ!!」
言葉は怒っていても、声色や表情は笑ってる親友に思わず私も笑みがこぼれた。
二人で特に理由もなく笑いながら、朝通った道を朝とは逆向きに歩いた。
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