壱〓些細な始まり

5/6
前へ
/8ページ
次へ
「それで、そしたら茅崎くんが机に飛び乗って『ロミオ、なぜアナタはロミオ……じゃねぇし!!!』って」 「うん。桃々のクラスは相変わらずみたいね。」 歩道を歩きながら来月に迫る文化祭のクラス発表の話をしていた。 そんなに大きい通りじゃないから、わりかしすぐ近くを車が通るが人通りは結構あった。 「それで、結局桃々のクラスは演劇なの?」 「うん。題名は『ロミオ(代役)とジュリエット』だって」 「とりあえず、(代役)にはツッコミ入れないから」 「話のあらすじは、急病で来られなくなったロミオの代わりに、アルジェンス三世がジュリエットと密会するんだよ。そしてそれに気づいたジュリエットが、アルジェンス三世をお供にロミオのお見舞いに行く旅をするんだって。」 「……………」 「そして幾多の困難を乗り越え、恋に落ちるアルジェンス三世とジュリエット。そんな2人に追っ手の魔の手が!っていう話の感動の活劇ラブストーリーなんだよ。」 「…………」 「私は中盤で仲間になる美女剣士リリアをやるから見に来てね、音彩。」 どことなく疲れた表情をしてる桃々に、私は引きつった笑みで頷いた。 とりあえず『ロミジュリ要素皆無』とか『お見舞いなのに旅!?』とか『ロミオの存在空気!!』とか『なぜ美女剣士!?』とかは言わないでおこうと思った。 というか、誰だ。そんなふざけだ話を考えついたのは。(A.茅崎くんです。) そして、その劇の内容とかが微妙に気になるのは私だけなのだろうか。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加