第壱章『魔術士は少年に終わりを告げる』

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7月19日 俺は今日、この日にある期待を抱いていた。 夏休み前日の今日、小学生から大学生まで、つまり学生なら老若男女問わず、遠足前の子供みたいに妙にテンションが上がっている(老若男女の使い方が可笑しい気がするが、そこは主人公が馬鹿だということで納得してもらいたい) そんな今日ならもしかすると、テンションが上がった魔法使いや超能力者--彼はこういった存在を信じている--がついうっかり自分の前に現れるのではないか?とそう俺は期待していた。 もちろん、ただ待っているだけじゃ遭遇出来る確率(以下エンカウント率)は1%にも満たないだろう。 だから、今やっている帰りのホームルームが終わったら、市内中を捜索してエンカウント率を出来る限り上げるつもりでいる。 「連絡事項は以上。夏休み中に怪我するんじゃねぇぞ」 担任の教師--男、二十七歳、担当科目、国語、もしかすると魔法使いなんじゃね率3%--の話しが終わり、生徒達がそれぞれ仲のいい友達と帰る準備をし始める。 「さてと」 俺はそう一言呟き、手にしていたライトノベル--蒼焔~Last of days~--を虫を叩くのと似た感じに両手で閉じた。 パン。と空気を叩いた音がしたが、周りの話し声に掻き消され自分にしか今の音は届いてなかった。
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