第壱章『魔術士は少年に終わりを告げる』

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バッグにライトノベルを入れて、立ち上がろうと椅子の背もたれに手をかけたところで自分の机に誰かが両手をついてるのに気付いた。 「さくや~ん、ま~た蒼焔シリーズを読んでたんやね」 やけに間延びした声で自分のあだ名--佐久間 望だからさくやん--を呼ばれた。 今の呼び方で誰かがわかったが一応自分を呼んだ人物の顔を確認しておく。 顔を上げるとそこには、両耳合わせて十二個ものピアスをしている髪を茶色に染めてニヤニヤ笑っている男子が立っていた。 俺はとりあえず 「はぁ」 盛大にため息を一つ漏らした。 「なんやねん、そのため息は」 ツッコミの時は早口になり、それ以外はとことんマイペースのコイツの相手をするのは疲れる。 勘弁してください、神様。どうして俺ばっかり。 それをわかっていても今の自分の心境を懇切丁寧に教えてやることにした。
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