1人が本棚に入れています
本棚に追加
朝食を食べ終え、私は何気なく時計を見た。
あれ……壊れた?
電池切れたかな?
食べる前と変わらない、丸の中のふたつの針。
腕時計を見る。
コンポのデジタル表示を見る。
……すべての時計が、朝の7:05でフリーズしていた。
「何これ」
つぶやくと、不意に背後に気配を感じる。
ハッとして振り返ると、先程まで気持ちよさそうに眠っていたはずの白蛇が、鎌首をもたげて私を見つめていた。
確かに、見ている。それもひどく穏やかなまなざしで。
おでこの真紅が、自らの意思で輝きを増したように思えたその時……、
「おはようさん」
と、蛇の口元からやけに軽い挨拶が繰り出された。
長い舌が、声に合わせてチロチロと忙しなく動く。
「時間はオイラが止めたので、会社急がずオッケーオッケー」
おでこからより一層妖しい光を放ちながら、蛇は緊張感なくそう続けた。
「だからオイラの頼みを聞いて。お姉さん」
私は時計と共にフリーズしたくなる頭をフル回転して、どうにか口を開く。
「……あなたは誰? どこから来たの?」
最初のコメントを投稿しよう!