『恋』

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○明日香の部屋 早苗が玄関先に立っている。 明日香は部屋を軽く片づけている。 明日香「本当にゴメン。散らかってて」 早苗「いいの、いいの」 明日香「あがって」 明日香、写真立てに気がつくと慌てて写真立てをテーブルの下に隠す。 早苗「おじゃましまーす」 明日香「早苗は紅茶だったっけ?」 早苗「あっ、なんでもいいよ」 明日香、用意をし始める。 早苗、部屋へと進み、腰を下ろす。 早苗「で、相談あるんでしょ?」 明日香の手が止まる。 早苗「何でもいいなよ」 明日香「私・・・・ホラ、男の人に興味がないって話」 早苗「だから、気にしたらダメだって」 明日香「なんか、当たってると言うか・・・・上手く言えないんだけど」 ・・・・。 明日香「信じられないと思うけど、私、今まで男の人を好きになった事ないって言うか・・・・それどころか、ちょっと恐いかなって」 早苗「怖いって?そんな事・・・・」 明日香「(制して)前に早苗、聞いた事あったよね?『どうして、母子家庭なのに東京なのか?』って」 早苗「そんな事、聞いたかな?私」 紅茶を運び早苗の前に座る。 明日香「多分、お母さん、私には失敗して欲しくないと思う」 早苗「失敗?」 明日香「お母さん、いつも手とか足とかにアザがあって・・・・そんな風に私をあわせたくないと思って・・・だから良い大学入って。良い会社入って。いい人見つけて」 早苗「いい人見つかるよ、きっと。だからさぁ、楽しい大学生活が待ってるんだし」 明日香、俯いて、涙をためている。 明日香「・・・・」 早苗「ほら、顔、洗ってきな」 明日香「ウン」 明日香、顔を洗いに行く。 早苗、テーブルの下にあった写真立てに気がつく。 早苗「!」 明日香と健二が写っている写真。 早苗、真剣な眼差しで写真を見ることしか出来ないでいる。
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