『恋』

21/38
前へ
/38ページ
次へ
○明日香の部屋、夜 机の上に立ててある写真を見ている。 明日香、写真を見つめている。 写真立ての中から写真を抜き取り、意を決したように写真を丸めて、ごみ箱へ捨てる。 携帯電話をとって、番号を押し始める。 暫くして、 明日香「あ、もしもし、私・・・・明日、帰る事にする」 ○公園 先程、花火をしていた場所。 明日香、ベンチに座っている。 早苗が向こうから来る。 早苗「どうしたの?こんな夜中に」 明日香「私、明日帰る事にした」 早苗「明後日じゃなかったの?」 明日香「もう、いいの」 早苗「いいって?」 明日香「じゃあ・・・・」 明日香、行こうとした 早苗「健二の事、好きなんでしょ?」 明日香、足を止める。 明日香「そんな事ない」 早苗、明日香の前に行き、顔を見て。 明日香、下を向いている。 早苗「嘘つく時、下向くのやめな!」 明日香「・・・・早苗!」 明日香、早苗に抱きつき、鳴咽する。 *       *      * ベンチに座っている明日香と早苗。 鼻をすすっている明日香。 早苗「そっか・・・・私がいない時にね」 明日香「私、私・・・・」 早苗「もうすぐ、夜が明けるね」 空が薄明るい。 早苗「ねぇ、前に明日香、言ってたよね。陽の登る前の青い瞬間が好きだって。何もかもが生まれる希望に満ちた瞬間が好きだって」 明日香「・・・・」 早苗「でも、私はどっちかと言うと夕焼けの真っ赤な瞬間が好きだな」 明日香「・・・・」 早苗「成功しても失敗しても、陽が沈むのを見ると、《あぁ、また明日頑張んなきゃ》って自分に言い聞かせる時の方が私、好きなの」 陽が登る前の青い瞬間。 早苗「恋愛なんてさぁ、当たって砕けろ。とにかく、自分の気持ち、相手に伝えなくっちゃ。それにまだ失敗したわけじゃないじゃない」 明日香「だって」 早苗「アイツはまだ、想い出の中で生きてんだよ。だから、言ってやんなよ。過去の女なんか忘れさせちゃいな」 明日香「でも・・・・」 早苗「?」 明日香「私にはできない」 早苗「・・・・」 明日香「ゴメン」 早苗「なにも謝んなくてもいいよ。向こう着いたら手紙頂戴ね」 明日香「ウン」 早苗「コラ、泣くな」 明日香「・・・・」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加