『恋』

22/38
前へ
/38ページ
次へ
○明日香の部屋 荷物を手にした明日香、鍵を閉める。 ○バス停 明日香、バスに乗り込む。 ○走るバス、車内 明日香、窓の外を見ている。 手には『若菜集』。 早苗の声がよみがえる。 《アイツはまだ、想い出の中で生きてんだよ》 明日香「!」 反対側から走って来る健二の姿が見える。気づかずそのまま行ってしまう。 明日香、下を向き『若菜集』を見つめる。 《成功しても失敗しても》 明日香、目を閉じる。 《陽が沈むのを見ると、『あぁ、また、明日頑張んなきゃ』って》 明日香、目を見開いて 明日香「すいません。止めてください!」 止まるバス ・・・・をおりて凄い勢いで来た方を走り出す明日香、走る、走る、走る・・・・。 明日香のN「私には好きなものが二つあった。でも今は三つになった。一つはまだ陽の登る前の青い瞬間。一つが陽の沈む瞬間。そして、もう一つは・・・・」 明日香、全力で走る。 (F.O) 『春はきぬ  春はきぬ  さみしくさむくことばなく  まづしくくらくひかりなく  みにくゝおもくちからなく  かなしき冬よ行きねかし』
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加