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○明日香の部屋
荷物を手にした明日香、鍵を閉める。
○バス停
明日香、バスに乗り込む。
○走るバス、車内
明日香、窓の外を見ている。
手には『若菜集』。
早苗の声がよみがえる。
《アイツはまだ、想い出の中で生きてんだよ》
明日香「!」
反対側から走って来る健二の姿が見える。気づかずそのまま行ってしまう。
明日香、下を向き『若菜集』を見つめる。
《成功しても失敗しても》
明日香、目を閉じる。
《陽が沈むのを見ると、『あぁ、また、明日頑張んなきゃ』って》
明日香、目を見開いて
明日香「すいません。止めてください!」
止まるバス
・・・・をおりて凄い勢いで来た方を走り出す明日香、走る、走る、走る・・・・。
明日香のN「私には好きなものが二つあった。でも今は三つになった。一つはまだ陽の登る前の青い瞬間。一つが陽の沈む瞬間。そして、もう一つは・・・・」
明日香、全力で走る。
(F.O)
『春はきぬ
春はきぬ
さみしくさむくことばなく
まづしくくらくひかりなく
みにくゝおもくちからなく
かなしき冬よ行きねかし』
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