11人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「大変、もうこんな時間! あっ、じゃあ学校遅れちゃうからあたし行くね!そうそう、朝ごはんは向こうの台の上だから食べて。元気になったら帰ってもいいけど、このマンションの部屋、オートロックだから気をつけてね。一度出ると入れなくなっちゃうよ。あーやだ、急がないと。じゃね!」
言うだけ言って、少女は出て行った。
「な……なんだったんだ」
嵐が去った、というのはこういうことなのだろうと水樹は思った。
こちらに意見させてくれる間など一切与えてくれず、勝手に来て勝手にいなくなる。
結局、何だったのかわからなかったではないか。
「あー、もうっ!」
いらいらしながら頭をかきむしる。
水樹は一般的に不良と称されるところに分類される。
だから自然と人は寄り付かないし、近づけば大抵は逃げる。
それでいいと思っているし、そうして生きてきた。
両親、親族とはとっくの昔に縁を切っている。
学校とは小学校を卒業してから関わりを持ったことがない。
今は同じような境遇にいる『仲間』とつるんで日々の生活を送っていた。
犯罪に手を染めるようなことはしないものの、多少法に触れそうなことはやっているし、喧嘩なんていうのは数えるのも面倒だ。
世間は彼らを相手になどしない。むしろクズだと切り捨てる。
なら彼女は?
最初のコメントを投稿しよう!