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少女が姿を現したのは、もう日が暮れかかった夕方だった。
水樹が待ち始めてからほぼ十時間が経過している。
「あれぇ? 何してるの?」
水樹は待ちくたびれてドアにもたれかかって眠ってしまっていた。
そこにかかった声にはっとして目を覚ますと、不思議そうな顔をして少女が顔を覗き込む。
「別に待ってたんじゃねぇよ。忘れ物したんだ!」
さっと立ち上がりドアを指差す。
近所迷惑としか言いようのない大声を上げて。
「なあんだ。待たせてごめんね」
だから待ってねぇって、という声は全く届かない様子で少女はかばんの中を探った。
片手にスクールバッグ、もう一方に買い物袋をさげて大変そうだ。
「あった。――はいっ」
鍵を穴に差込み、回した後で先に入るよう促した。
水樹は遠慮もなくずかずかと足を踏み入れ、朝眠っていた部屋の枕元からバッグを引っつかむ。
そして同じようにして玄関へ向かおうとすると、後ろから声がかかった。
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