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気が付けば、誠道の刀は川に飛ばされていた。
「誠道殿、これでもまだ互角と申すか」
剣吾から刀を突き付けられ、誠道はその場にへたりこんでしまった。
「悔しいが、楓は御主に返す」
誠道はふらつき立ち上がり、剣吾に掴まって歩くのがやっとだった。。
廃寺のお堂を誠道が開けると、中から楓が涙を拭って剣吾に駆け寄り、思い切り抱き締めた。
「剣吾様、有難う」
剣吾は楓の言葉に頬を赤らめた。
剣吾が振り返ると既に誠道の姿はそこには無かった。
「楓、道場の皆が待っておる。早く戻るとしよう」
「はい、剣吾様」
触から解き放たれた満月は、穏やかな優しい蒼い光で、全てを赦すかの様に照らしていた。
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