出会い

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  納屋の周りは広大な麦畑。 収穫を終え、干し草がたくさんあった。 それに、頭から潜るようにして女は眠り、男は月明かりを頼りに本を読み続けていた。 雨はいつしか止んでいた。 ………………リ…ン… 小さく鈴のような音。 それは段々近付いてくるようだった。 「…………………っ!」 女は起き出して藁を掃い靴を履くと戸口へ急ぐ。 「どこへいく?」 「迎えが来たの」 「迎え?」 訝しげる男をよそに、女は戸を開け、持っていた紐のついた小さなベルを鳴らす。 しばらくして、女と同じ黒いコートを羽織った小柄な女が入ってくる。 小柄な女は茶髪のショートヘアで、やや吊り目気味。 「ご無事ですか?」 小柄な女は男の存在に気付く。 「あなた…彼女に何かしました?」 小柄な女は噛み付きそうな剣幕で男を見る。 「何も」 「ホモですか!」 「なんでそうなる?」 「この狭い中で、その顔でいながら、手も触れずにいるだなんて…」 男の青黒い髪とモテそうな顔つきから、小柄な女は勝手な想像をした。 「礼をいわねばならんようだ、ミーア」 名を呼ばれた小柄な女は頷き微笑んだ。 「アンタはいい人だね。一緒に雨宿り出来てよかった。じゃ…」 「待て!」 二人が外へ出ようとした時、男は気配を感じた。 「まだ何か…」 「しッ…」 男はゆっくり静かに戸を開ける。  
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