50人が本棚に入れています
本棚に追加
街に着いたのはあれからすぐ。明け方まではまだ時間がある微妙な頃合い。
「家はこのあたりか?」
気付けば城の真ん前に来ていた。
「私たちは城に勤める者だ。家はここだ」
女は城を指して言った。
この城の侍従たち、特に独身者は、城内で生活することが許可されている。
とはいえ、部屋には寝るためのベッドしかないが。
「侍従なのか?」
「……ん……まぁ……そんな所だ……」
女はつっかえながら言った。
「何か知られたくない事情でもあるのか?」
「…いや、そんな事はない。旅人のアンタに隠す必要もないだろう」
そう判断させたのは男の優しさを感じたからだ。
暴行や殺人を犯す者ならば、納屋にいた時点でとっくに被害を受けている。
「私はセルリーナ姫の侍従でライレーズという」
「オレはゲオルドだ」
「ゲオルド…アンタに出会えてよかったよ。出来れば姫様にもお会いさせたいぐらいだ」
「オレを? なぜ??」
「優しさと並ならぬ強さを持った者がそばにいてくれると、何かと心強いのでな」
「流れ者のオレでもか?」
「素性など自ずとわかろう。言いたくなければそれでも構わない」
「で? オレにどうしろと??」
「行くあてがないのないのなら……闘技祭に出てみないか?」
ゲオルドは悩んだ。
「急ぐ用はないが…オレが出るメリットはあるのか?」
「勝てば賞金が出る。希望すれば姫の護衛を勤めることもできるぞ?」
「…………それはつまり軍人になれ、ということか?」
「…………そういう見方もあるんだな……嫌か?」
「好んで好きというわけではない…」
「そうか……」
ライレーズは肩を落としてゲオルドに背を向けた。
「ミーア、後頼む」
ライレーズは門の中へと消えて行った。
最初のコメントを投稿しよう!