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「…はは、まさかぁ?」
「そこ、余計な私語は失礼よ。
魔法装置越しとはいえ、正式な会談なんだからね!」
実はこの私語も筒抜けたりしている。
オルフェア製は伊達ではない。
「はーい。」
二人は声を揃えて押し黙った。
しばらくして、会談はあらかたの決着を見せた。
あいかわらず、議論というのはまとまらないものだ。
たくさんの意見はより良い知恵を生むが、乱れやすい。
あーだこーだと話しているうちに、時間切れになることが多かった。
そんなところにやって来たのだ…あの男が。
レザープレートの上にボロボロのジャケットを羽織り、腰にアイアンソードをぶらさげて肩からかけたバッグの中からは装飾品がはみ出している。
肌には大量の名誉の負傷はあったが、どうやら首尾は上々だったらしい。
「ダイアナ!」
フォレストグリーンの硬い髪の毛をバリバリとかきむしったあと、青年はダイアナに向かって両手を広げた。
「ゼッシュ?
今度はどこに行ってたのよ!」
結婚の予定はしていた。
だが、ゼッシュは思うところでもあったのか18才ぐらいから遺跡に入り浸り…しばらく帰って来なかったのだ。
時の流れにすっぽかされたとも感じたダイアナは、前ほど恋愛の話はしなくなった。
もとより研究者肌ということもあり、教え子を育てることに気を向け始めた矢先である。
「ケレンセンの近くに古い遺跡が見つかったから、潜っていたんだ…ついでに後進の指導もしてやらねばな。」
ゼッシュももうそんな立場か…24、5才にすれば異例の身分である。
「それに、結婚指輪に良い石を探してもいたけど。
どうせ結婚指輪なんだから、最高の石をと思ってね。」
分けていたのか、胸ポケットから淡くピンクに光る石を出す。
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