夏の思い出

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夏の思い出

昨日の夜、娘が酷く疲れて帰宅したよ。 『先輩の夏が終わっちゃった』 と、開口一番に言った。 その言葉で娘の学校は予選落ちしたことを悟った。 『どこの学校も凄かったもの。また来年、楽しみにしてるから』 と私。 娘が帰る前には何となくわかっていた結果… だから、娘が帰ってきたらなんて言おうか、一生懸命に考えいたのに…ありふれた言葉になってしまった…親って、ほんと無力ね… そうだよね。 娘には来年があるけど、先輩達は最後の夏… 都大会を抜けて関東大会へ…そしてディズニーランドでの出演切符を手に入れたかった、先輩達の夢… いつしかそれは、先輩達だけの夢ではなくなっていたみたい。 一緒にこの夏を頑張ってきた娘達後輩にもしっかりと引き継がれてた。 言葉に詰まった私は、 『だけど、今日のステージは今迄で一番かっこよかったよ。最高だった』 と言うのが精一杯だったんだ… 夜遅くに息子と家のそばの河川敷に行ったの。 お彼岸だから、ご先祖様の供養の為にね。 2人で散歩しながら、 毎年ここで行われている花火大会の話をしたんだ… いつしかの花火大会の日、私は子供達を連れて河川敷にシートを敷き、目の前で打ち上げられる花火をビクビクしながら観てた。 あなたは仕事で、始まる時間には間に合わなくて… だけど…急いで来てくれた…大勢の観客の中に埋もれるようにいた私達三人をちゃんと見つけてくれた。 『家族ってすごいなあ』 ってあの時思ったよ。 河川敷まで結構距離があったのに、疲れていたのに急いで来てくれて…子供達も『パパだぁ』って、とても喜んで… 大きく見えたあの日の花火は、ずーっと目に焼き付いてる。 花火を観ると幸せな気持ちになるのは、あの夏の花火のお陰なの。 あなたがくれた、 お金では買えない、 かけがえのないもの。 今年の夏も終わりだね… 花火大会の賑やかさは全くない、静まりかえった河川敷… まるで、 今の うちの中みたい… 家の中も河川敷も変わらないように思えて泣きそうになった。 息子が気づいて、 『また考え過ぎだよ』 と言ってくれた… 『そだね』 と笑って返したけど、 一瞬笑った顔は、すぐに消えてしまった…
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