牛皐、検正使を殺し出奔し、張覇、道に迷いて蛟を斬る

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「ああ。蛟は退治したぜ。それとこんな物を拾ったんだが、誰かの形見じやねえか。」 張覇はそう言って、懐にしまっていた櫛を取り出し老人に手渡した。その櫛を手にした老人の目から大粒の涙が止めどなく流れ落ちた。 「ひょっとして爺さんの。」 老人は年齢を感じさせる手で涙を拭うと何度も礼を言った。 「お察しの通り。これは娘の櫛にございます。生きて帰ることは叶いませんでしたが、こうして娘の形見だけでも儂の元へと連れて帰ってきてくれただけでも、なんとお礼を申し上げればよいか。」
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