18人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、上がれ上がれ! 飯でも食っていくといい!」
祖父が大らかに笑うが、ソラは申し訳なさそうに手を振り、
「あ、いや。今日は挨拶に来ただけだから」
「そうなのか……飯くらい食ってけばいいのに」
残念そうに眉尻を下げる祖父に、ソラは罪悪感を抱く。
「しょうがないですよ、おじいさん。ソラ君も来たばかりでいろいろと忙しいんですから」
たしなめる祖母に更なる罪悪感を募らせたソラはいたたまれなくなり、
「また来るから、その時にでも。じゃ、そろそろ行くよ」
「また来いよ! 近い内にな!」
祖父母に見送られて、祖父母宅を後にする。
表札には、見慣れた自分の名字、『夕上』が掲げられている。
夕日がまさしく地平線の彼方へと落ちようとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!