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「…鳥さん鳥さん。」
吹雪が続く寒い日に、人間は飛べない鳥に話し掛けました。
「何でしょうか、人間さん。」
「ちょっと考えたんだが…いい加減この呼び方を止めて名前で呼び合うようにしないかい?」
「…名前?」
「…そう、私には名前があるんだ。
…君にも…名前があるだろう?」
人間はにっこりと笑い、飛べない鳥に問い掛けました。しかし、飛べない鳥は困惑しました。
…飛べない鳥には、名前がなかったのです。
「…どうしたんだい?
…あぁ、こう言う場合は私から先に名乗るものだね。
…私の名前はアルフレッド、アルフレッド・ルイス。
…君の名前は?」
「…あの…私は、私には…
…名前が…ないのです。」
「…えっ!?
…す、すまない。
…そうとは知らずになんと言うことを…」
「…いえっ!良いんです。
…私たちの種族は、飛行が完全に上達したときに、初めて仲間だと認められ、部族長から名前を授けて貰えるので…」
「…と言うことは…」
「…そうです。
…ちゃんと飛行が出来なければ仲間としては認められません。
…しかも認められるまでの期限は新たな地に渡るまで。
…私はもうあの部族の仲間にはなれません。
…そして…他の同じ種族とも…。」
飛べない鳥はとても淋しそうに人間へ自分の身の事情を説明しました。
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